月次の収支に対する予実管理資料を、担当者が毎月手作業で組んでいました。会計システムからのコピペや売上抽出の手順に時間がかかり、経営判断に必要なタイミングで数字を出せないこともありました。
marutto は社内で運用している AI エージェントに「予実管理資料作成スキル」を実装し、月次で約 5 時間かかっていた作業を約 10 分に短縮。手作業に紐づいていた転記ミスや項目漏れもゼロになりました。
中小企業の経営管理業務を、社内 AI エージェントでどこまで自動化できるかを検証した実践記録として整理します。
目次
1. 背景と課題
2. 取り組み(What / How)
3. 効果:Before / After と現場で起きた変化
4. 担当者の視点から見た変化と学び
5. よくある質問(FAQ)
6. お問い合わせ
1. 背景と課題
marutto の月次業務のなかで、担当者が固定で抱えていたのが「月次収支の予実管理資料づくり」でした。売上目標に対して当月の実績がどう推移し、支出との差引で着地はどうなるのか。この数字を経営判断に使うためには、会計システム上の確定データを、社内で使っている予実管理表のフォーマットに整え直す必要があります。
作業自体はシンプルな転記の積み重ねです。会計システムから月次決算資料を出力し、必要な項目を予実管理表へコピペしていく。売上、支出、費目ごとの内訳。行と列を照らし合わせて貼り付ける工程が、費目の分だけ延々と続きました。
さらに、月次締めを待たずに途中経過を掴みたい局面もあります。売上管理表から売上のみを抽出し、別の管理表として組み直す作業も、担当者の手作業でした。
月次と週次の二本立てで、同じような転記作業が発生していたことになります。
この構造には、二つの負荷が張り付いていました。
● ひとつは時間。月間で概ね 5 時間ほどを転記作業に取られていました。
● もうひとつは正確性です。「どのセルに何を貼るか」「どの行を抽出するか」を毎回目視で判断していたため、疲労や慣れによって入力ミスや項目漏れが混ざるリスクが常にありました。
結果として起きていたのは、経営判断のタイミングに数字が間に合わない、という状態です。月次の途中で「今の売上着地はどうか」を経営会議で確認したくても、資料化に時間がかかるため、判断の場に間に合わないケースが繰り返し発生していました。
2. 取り組み(What / How)
marutto は社内で AI エージェントを運用しています。もともとは開発現場のコード自動化を主目的とするツールですが、「スキル」として業務手順を定義することで、コード以外の定型業務にも展開できる設計になっています。
担当者は、この AI エージェント上に「予実管理資料作成スキル」を実装しました。スキルの中身は次のとおりです。
● 月次決算資料の自動転記
会計システムから出力される月次決算資料を入力として、予実管理表のフォーマットに合わせて売上・支出を自動で転記する
● 週次売上レポートの自動整形
売上見込み推移表から週次の売上実績を抽出し、週次レポートとして自動で整形する
● 判断ルールのスキル側集約
「どのセルに何を貼るか」「どの行を抽出するか」など、これまで担当者が目視で判断していた工程を、スキル側にルールとして集約する
運用は毎月 1 回、スキルを実行するだけです。会計システムから月次決算資料を出力する初動と、生成された資料の最終確認だけを人が担当し、そのあいだの転記・抽出・整形はすべてスキルが自動処理します。
3. 効果:Before / After と現場で起きた変化
作業時間はおよそ 1/30 に短縮されました。数字だけを見れば時間削減の事例ですが、現場で起きた変化はもう一段深いところにあります。
月次の途中で「今週の売上着地は?」と経営から問いが飛んできた際、これまでは「翌週の会議までに用意します」と返していた対応が、その日のうちに数字を出して返せるようになりました。判断のスピードが上がったこと自体が、経営管理業務の姿を変えつつあります。
4. 担当者の視点から見た変化と学び
①「気をつければ防げる」は仕組みで無くす対象だった
手作業の転記ミスは、これまで「気をつければ防げる」と考えてきた領域でした。実際、集中していれば、ミスの発生頻度は低く抑えられます。
ただし、月次のたびに数時間の集中を強いる運用は、疲労や慣れという別の変数を持ち込みます。ある月は防げても、別の月には項目が一つ漏れる。この揺れを「人間の気合いと注意力に頼る 」設計から「仕組みで発生させない」設計へ切り替えたのが、今回の取り組みの本質でした。
● 気づき
注意力に依存した品質担保は、月次で反復する業務では成立しにくい。仕組みで発生源を消しにいくのが正解だった。
② AI エージェントが出した数字を「そのまま信じない」検算工程は残す
自動化が成立しても、スキルが生成した数字をそのまま経営会議に提示する運用にはしていません。marutto では、自動生成した予実管理表と週次売上レポートに対して、担当者が 会計システム側の合計値との突合 を最終工程に組み込んでいます。差分がゼロであることを確認したうえで、経営会議への提示に回す流れです。
理由は二つあります。ひとつは、会計システム側のフォーマット変更や新規費目の追加が入った際に、スキル側の判断ルールが追従できていない可能性があること。もうひとつは、AI エージェントに任せた処理が「意図した通りに動いているか」を月次で目視で担保する必要があること。転記の手作業は仕組みで消えましたが、生成結果の検算だけは、人が担う工程として残しています。
● 気づき
自動化は「人が確認しなくてよい」ことを意味しない。生成物の検算工程を仕組みの一部として残しておくと、AI エージェントの運用は長期的に安定する。
③スキル化で「同じ品質を誰でも再現できる」土台になった
従来、月次予実管理は担当者の頭のなかにある判断ロジックに支えられていました。担当が休むと止まる。担当が変わると引き継ぎに時間がかかる。この属人化は、経営管理という業務の性質上、どこの中小企業にも共通する課題です。
スキル化を経て、判断ロジックはスキル定義ファイルという形で明文化されました。頭のなかにあった「どの費目をどう扱うか」の判断ルールが、そのままドキュメントとして残る形になっています。あとから振り返ると、月次業務の手順書が半自動的に整った効き目もありました。
● 気づき
スキル化は自動化の手段だが、同時に「業務の設計図」を残す手段でもある。
④横展開と追従ルール整備が次の宿題
現時点で残っている論点は二つあります。ひとつは会計システム側のフォーマット変更への追従ルール。項目名の変更や新設が入った際、スキル側をどう更新するかの運用手順を、今後さらに整備していく必要があります。
もうひとつは横展開です。月次・週次の予実管理で手ごたえがあった仕組みを、部門別・案件別の切り口でも同じように動かせないか、検討を進めています。
● 気づき
一つの業務でスキル化が成立すると、隣接業務への横展開ロジックがすぐに立ち上がる。次の宿題は運用の耐久性設計。
5.よくある質問
項目名や列構成が変わった場合、スキル側の定義を更新する必要があります。追従ルール(どのタイミングで、誰が、どう更新するか)の運用手順は、今後さらに整備していく予定です。
考え方としては転用可能です。marutto 内でも、部門別・案件別の切り口で同じ仕組みを動かせないか検討を進めています。ただし、業務によって「何を判断ルールにするか」の設計は個別に必要です。
はい。スキル実行そのものはコマンド 1 回で、コード編集は発生しません。会計システムから月次決算資料を出力する初動と、生成された資料の最終確認だけを人が担当します。エンジニアリング知識は前提としません。
会計システムやクラウド上の管理ツールで扱っているデータが、既存の運用として各サービスに保管されている前提はそのままです。この Q&A では、AIエージェントが処理の過程で、外部へ財務データを送信することがあるか?という質問に対して回答します。
marutto では、社内運用の AI エージェント上でスキルを実行する構成としており、財務データ本体を新たに別の外部 SaaS へ送信する運用は取っていません。導入時は、各社の情報セキュリティポリシーと、利用する AI エージェント基盤側のデータ取り扱いポリシーを突き合わせて、構成を検討する必要があります。
企業規模を問わず、月次で売上・支出の予実管理を行っている組織全般が対象です。特に、担当者が兼務で予実管理を回していて、手作業の割合が高い運用に効果が出やすい構造です。
加えて、経営判断のサイクルを短くしたい組織との相性も想定しています。現状の月次サイクルを維持したまま作業時間を短縮するだけでなく、月次→週次、週次→日次と、数字を確認する頻度そのものを上げていける余地が広がるためです。※ marutto での実運用は月次サイクル+週次売上レポートの二本立ての段階で、日次サイクルの運用実績は現時点ではありません。
6. お問い合わせ
月次の予実管理や、経営管理まわりの手作業を AI エージェントでどう自動化できるかは、業務ごとに設計の粒度が変わります。marutto では、社内で実践してきた設計知見をベースに、貴社の月次業務の棚卸しからスキル設計まで伴走します。
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お待ちしております!
最終更新日: 2026/07/14









