marutto の広報PRチームが、社内事例を集めて整える AI エージェントを作りました。コードは書かず、業務の流れを分解して指示と設計を AI に渡す形で組み立てたものです。「AIエージェント自身にインタビューして知見を集める」機能などを組み込んだことで、事例を書き出す案件担当者の負担が軽くなり、広報PR業務にかかる時間も短縮。その結果、社内のナレッジが短期間で数十件たまりやすい仕組みになりました。
経営者が主導した事例「自社AIエージェント13体」に続く、現場発の続編です。
目次
1. 背景:広報PRチームが AI エージェントを作った経緯
2. 取り組み:何をどう作ったか
3. 効果:誰の業務がどう変わったか
4. 広報PRチームが学んだこと
5. よくある質問(FAQ)
6. お問い合わせ
1. 背景:広報PRチームが AI エージェントを作った経緯
困りごと
marutto の広報PRチームには、社内事例を集めるためのフォーマットがありました。各案件の担当者が、自分の経験した事例をそこに書き出していく運用です。
ただ、忙しい中で自分の事例を端的にまとめる作業は重く、フォーマットを使っているのは一部のメンバーだけ。集まる件数は限られていました。
特に課題だったのは次の 3 つです。
・事例収集フォーマットが、忙しさの中で書き出せない。一部のメンバーしか使っていなかった
・担当者ごとに表現や粒度がバラつき、品質が揃わない
・社内事例として残らないまま、過去の知見が個人の頭の中に埋もれてしまう
「書き出す側の負担を減らせば集まるはず」というのが、広報PRチームの仮説でした。
自分たちで作ってみることにした
marutto では、すでに AI エージェントの導入が現場で進んでいました。日々その動きを近くで見ていた広報PRチームは、対話型 AI 開発ツールを「指示と設計を渡す道具」として位置付け、自分たちで組み立てるチャレンジを始めました。コードを書く力はなくても、業務の流れを分解して「AI に何を頼むか」を言葉にする力なら、自分たちの中にあると判断したからです。
2. 取り組み:何をどう作ったか
前作の「自社AIエージェント13体」が複数エージェントの役割分担構成だったのに対し、本作は一つのエージェントに業務の流れを組み込んだ単体構成です。
● 何を作ったか
社内事例の素材を入力すると、共通フォーマットへの整形を経て、社内事例集に投稿できる形まで仕上げる AI エージェントです。
本事例では「社内事例素材化 AI エージェント」と呼びます。
ここでいう「社内事例の素材」とは、案件担当者の頭や資料の中にある一次情報を指します。
具体的には、案件の背景/課題/どんな取り組みをしたか/成果/担当者の学びなどです。これまでは各担当者が空欄フォーマットを前に「何をどう書けばよいか」から考える必要があり、そこで手が止まっていました。
担当者は「端的にまとめて書き出す」というプレッシャーから解放されます。思い出しながら話した内容や手持ちの資料を渡せば、共通フォーマットに整った素材が、そのまま社内 wiki に投稿できる状態で出力されます。
事例素材化フロー【出典:自社制作】
● どう作ったか(非エンジニアの組み立て方)
広報PRチームは、コードを書かず、対話型 AI 開発ツールに指示と設計を渡す形で組み立てました。手順は次の 5 つです。
- 1.ゴールを先に決めた
- 欲しいアウトプット(社内事例集に載せる 1 件分の完成イメージ)を先に固めました。ここが決まっていないと AI への指示もぶれます
2.業務設計をする
ゴールから逆算して、業務を「聞き取り/整形/チェック/投稿」の 4 工程に分解しました
3.AI か人間か仕分けしたこと
定型判断は AI、案件固有の判断は人間、と工程ごとに切り分けました。全部 AI に任せようとしないことが、運用に乗せる鍵でした
4.動かしながら直す
対話型 AI 開発ツールに指示書として渡し、実際の素材で走らせながら修正を繰り返しました
5.社内事例集とつなぐ
出力先のフォルダ・命名規則・メタ情報まで固めて、素材化と蓄積の間にある手作業をなくしました
必要だったのは技術力ではなく、「ゴールから逆算して業務を分解し、AI に何を頼むかを言葉にする設計力」でした。
● 一つのエージェントに業務の流れを組み込む
複数エージェントを連携させる構成ではなく、聞き取りから整形・投稿までの流れを、一つのエージェントに組み込んだ単体構成です。担当者からの聞き取り内容や手持ちの情報を入力すれば、共通フォーマットへの整形を経て、社内事例集に投稿しやすい形まで一連の対話で進められます。
業務の流れそのものをエージェントに教える設計のシンプルさが、広報PRチームでも無理なく組み立てられた理由のひとつです。
さらに、本エージェントには「事例の題材となった別の AI エージェント本人に、実際にインタビューして知見を集める」機能も組み込んでいます。事例に登場する当事者エージェントに一人称で語ってもらった内容を、BEFORE / AFTER やできたことの各項目に溶け込ませて素材を厚くする仕組みです。作り手のバイアスに縛られない別視点を、AI エージェント同士のやりとりで取り込める設計にしています。
3. 効果:誰の業務がどう変わったか
社内事例素材化 AI エージェントを運用した結果、業務効率と社内ナレッジ蓄積の両面で変化がありました。
▼ ポジション別 Before / After
● 事例を書き出す案件担当者の負担が軽くなった
この取り組みで変わったことのひとつが、社内事例集に事例を書き出す担当者側の負担です。以前は空欄のフォーマットを前に「何をどう書けばよいか」を考えるところから始める必要があり、忙しい中でその時間を捻出できず、事例収集フォーマットを使えていたのは一部のメンバーだけでした。
社内事例素材化 AI エージェントを介したあとは、担当者は「思い出しながら話す」「手持ちの資料を渡す」だけで済みます。共通フォーマットへの整形やチェックはエージェントが担うため、端的にまとめるためだけに手を止める場面がなくなりました。結果として、これまで書き出し作業に踏み切れなかった担当者からも事例が集まるようになり、社内事例集への流入自体が広がっています。
● 業務効率の改善
1 件あたり半日〜1 日かかっていた素材化が、共通フォーマットへの整形・初稿チェックまで AI エージェントに任せられるようになりました。人間の作業は、最終確認と独自の一次情報の加筆だけです。
担当者ごとの表現のバラつきも、AI が共通フォーマットに整えてから人間に渡す設計のため、品質が揃いやすくなりました。
● 社内ナレッジが貯まりやすい仕組みに
業務効率化を目的にした取り組みでしたが、素材化のスピードが上がった結果、社内事例集に短期間で数十件のナレッジが集まりました。「ナレッジを貯めよう」と号令をかけたわけではなく、業務フローの中で貯めやすい仕組みになっていたためです。
集まったナレッジは、営業の提案・商談やコンサル現場の準備で活用されはじめました。広報PR の業務改善が、組織全体の知見アクセスにも波及した形です。
● 社外発信や新メンバー教育にも波及
社内事例集に集まったナレッジは、社外向けの発信素材(事例記事・note 記事)の元素材としても使えるようになりました。前作「自社AIエージェント13体」のような一次情報記事を生み出す原資が、社内に積み上がる構造です。
新メンバーの教育素材としても活用できる見込みです。「過去に何を、どう考えて、どう実装したか」が共通フォーマットで残れば、口頭での引き継ぎだけに頼らない知見の伝え方になっていきます。
4. 広報PRチームが学んだこと
広報PRチームが当初狙っていたのは、自分たちの業務を楽にすることでした。結果として、社内の知見が貯まる仕組みも組織に残っています。運用を通じて得た 4 つの気づきと、もうひとつ運用してから見えた境界線を整理します。
気づき1:コードが書けない = AI エージェントを作れない、ではない
対話型 AI 開発ツールに業務分解と指示を渡してみると、動くものが組み上がっていきました。コードが書けないことと、AI エージェントを作れないことはイコールではない。自分たちが抱える業務課題は、自分たちが一番よく分かっています。AI に何を頼むかを言葉にする力があれば、内製の入口は開いていました。
気づき2:「貯めよう」より「貯めやすい仕組み」
社内ナレッジの蓄積運用は、これまで何度試みても続きませんでした。「貯めよう」と号令をかけても、現場の優先業務に押されて後回しになります。本事例で機能したのは、号令ではなく仕組みでした。事例素材化の工程と社内事例集への蓄積を連動させ、業務フローの中で貯めやすい設計にした結果、運用が回りはじめました。ナレッジは「貯めよう」では貯まらない。業務フローの中で貯めやすい仕組みにすると、運用が動き出す。
気づき3:副次効果を最初から設計に入れる
業務効率化だけを狙うと、「時間が短くなった」以上の効果を測りづらくなります。本事例では、素材化のスピードを上げる過程で、社内ナレッジが蓄積される流れを最初から設計に組み込みました。具体的には、AI が出力する素材の保存先・命名規則・共通フォーマットを事前に決め、素材化のたびに社内事例集の同じ場所に、同じ形で残るようにしています。これにより、営業やコンサル現場が過去の事例を後から探し出しやすくなり、新メンバーの教育素材としても再利用できる形で蓄積されていきました。主目的の効率化と、副次効果としてのナレッジ蓄積を最初から一体で設計する。狙った効果以外にも意味を持たせる設計にしておくと、投資判断の材料が増えます。
気づき4:一つの仕組みが、複数の現場に効く
気づき3 が「主目的と副次効果を一体で設計する」という設計思想の話だったのに対し、気づき4 は「同じ仕組みが、想定していなかった現場にも波及した」という運用結果の話です。
本事例で作った一つの仕組みは、広報PR の業務効率化だけでなく、営業の提案・商談、コンサル現場の準備、新メンバー教育の素材、社外発信の元素材と、複数の現場で使われるようになりました。一つの仕組みは、運用が進むと想定を越えて使われる。設計時点で全ての波及先を見通せなくても、共通フォーマットで残す設計にしておくと、後から別の現場が取り込める余地が生まれます。
● 自分たちで作って初めて見えた「内製で行ける領域」と「伴走支援が要る領域」
自分たちで作ってみたからこそ見えたのが、内製で行ける領域と、伴走支援が必要になる領域の境目です。
社内事例素材化のように、一部門の中で完結し、外部システム連携が少ない領域であれば、部門起点の内製で十分機能します。一方、複数部門にまたがる業務、基幹システムとの連携、組織全体での運用定着まで含めて設計する段階になると、内製単独で完結させるのは難しくなります。そのときは、まず社内の情シスに相談してみて、それでも難しい場合に社外の AI エージェントサービスを使うという順序が現実的です。
「自部門で作れる領域」と「伴走者と組んだ方が早い領域」を見極めるラインが、運用を通じて見えてきました。
「自分の仕事を楽にしたい」から作り始めた仕組みが、結果として社内の知見を貯める仕組みにもなったのが、本事例の全体像です。中小企業の DX 推進において、AI エージェントの内製は、経営層や情シスだけに閉じた選択肢ではなくなりつつあります。広報PRチームのような非エンジニアの集まりからでも始められる領域があり、その経験を踏まえて伴走支援できる立場もある。marutto は、自社の取り組みを通じてこの両面を確認しています。
5. よくある質問
本事例では、marutto の広報PRチームがコードを書かず、対話型 AI 開発ツールに指示と設計を渡す形で作りました。大事なのは技術力ではなく、業務を分解して「AI に何を頼むか」を言葉にする設計力です。情シスや開発部門に依頼しなくても、当事者の部門が起点で作るという選択肢があります。
「貯めよう」と号令をかけるのではなく、業務フローの中で貯めやすい仕組みにすると運用が回ります。本事例では、事例素材化の工程と社内事例集への蓄積を連動させたことで、短期間で数十件のナレッジが集まりました。
本事例のように、自分たちが手作業で繰り返している業務を抱える部門から始めるのが現実的です。情シスや外部開発に依頼する場合と比べて、当事者の部門が動く方が業務に合った仕組みになりやすい一方で、複数部門横断の業務や基幹システム連携が要る領域では情シスや外部開発の知見が要ります。始めやすい候補は、広報・マーケ・人事・総務・経営企画など、ナレッジ運用や定型業務に課題を持つ部門です。
業務が比較的閉じた範囲(一部門の中で完結し、外部システム連携が少ない領域)なら、本事例のように当事者の部門が起点となる内製が機能します。
一方、複数部門にまたがる業務、基幹システムとの連携、組織全体での運用定着まで含めて設計する段階になると、部門単独では手が届きにくくなります。そのときはまず社内の情シスに声をかけて相談し、それでも難しい場合は社外の AI エージェントサービスを使う、という順序が現実的です。marutto では「まるっとAIエージェント」サービスとして、内製にチャレンジする部門への伴走支援と、構築から運用まで丸ごとお任せいただく支援の両方をご提供しています。本事例で得た自社の知見を、お客様の支援にも活かしています。
6. お問い合わせ
「自部門の業務を AI で仕組み化したい」「社内ナレッジが貯まる運用にしたい」という方は、お気軽にご相談ください。まずは社内の情シスや開発部門に相談してみるのがひとつの起点です。それでも難しい場合や、複数部門・基幹システム連携まで含めて考えたい場合に、marutto へお声がけください。自社の AI エージェント運用で得た知見をもとに、二通りの形でご支援しています。
● 内製を伴走支援する形
本事例のように、当事者の部門が起点となる内製を、設計・運用・改善のフェーズで伴走します
● 構築から運用まで丸ごとお任せいただく形
複数部門にまたがる業務、基幹システム連携、運用定着まで、marutto がワンストップで構築・運用します
ご相談時に、現在の業務課題と「自分たちで作りたい/お任せしたい」のご希望をお聞かせください。最適な進め方をご一緒に検討します。
\ あわせて読みたい /
最終更新日: 2026/07/07









