中小企業の経営者やIT担当者の皆様が抱える「情報分散」「部署間連携の悪さ」「非効率な作業」といった課題の解決策となり得るのが、ERP(Enterprise Resource Planning)の導入です。
ERPとは、企業の基幹業務(販売、購買、在庫、生産、会計、人事など)を統合的に管理し、経営資源を最適化するためのシステム です。
【導入の主要なメリットとデメリット】
▼主なメリット
1. 経営情報の「見える化」と迅速な意思決定(リアルタイムなデータ把握が可能)
2. 業務効率化と生産性向上(二重入力や定型業務の自動化)
3. 内部統制の強化(業務標準化とトレーサビリティの確保)
▼主なデメリット
1. 導入コスト(初期費用、ランニングコストの負担)
2. 導入期間の長さと社内リソースへの負担(数ヶ月から1年以上の期間と専任担当者の必要性)
3. 業務プロセスの変更(既存業務の見直しと従業員への浸透が必要)
「会社の情報があちこちに散らばっていて、全体像が見えない…」
「部署間の連携が悪く、同じような作業を繰り返している…」
「もっと効率よく仕事を進めたいけど、どうすればいいかわからない…」
中小企業の経営者やIT担当者の皆様、このようなお悩みはありませんか? もしかしたら、その解決策は「ERP(Enterprise Resource Planning)」の導入にあるかもしれません。
しかし、「ERPって大企業が使うものでしょ?」「導入は難しそうだし、費用も高いのでは?」と感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ERP導入を検討している中小企業の皆様に向けて、ERP導入のメリットとデメリットを分かりやすく、そして徹底的に解説します。
中小企業のERP導入を支援しているmaruttoが、ITに詳しくない方でも、自社の状況に照らし合わせて導入の是非を判断できるよう、具体的なポイントを挙げていきます!
ERPの基本的な定義については、関連記事「【保存版】ERPとは?簡単に言うとどんなシステム?基本の「き」を解説」をご参照ください。
【目次】
■ 中小企業がERPを導入するメリット
1. 経営情報の「見える化」と迅速な意思決定
2. 業務効率化と生産性向上
3. 内部統制の強化とセキュリティ向上
4. 顧客満足度の向上
5. 属人化の解消とノウハウの共有
■ 中小企業がERPを導入するデメリットと注意点
1. 導入コスト(初期費用・ランニングコスト)
2. 導入期間の長さと社内リソースへの負担
3. 業務プロセスの変更と従業員への浸透
4. システム選定の難しさ
5. カスタマイズの誘惑とそのリスク
■ ERP導入を成功させるためのポイント
■ まとめ
■ 中小企業がERPを導入するメリット
ERP導入は、中小企業に多くの恩恵をもたらす可能性があります。主なメリットを見ていきましょう。
- 1. 経営情報の「見える化」と迅速な意思決定
- 最大のメリットと言えるのが、経営状況のリアルタイムな把握です。
- これまでExcelや部署ごとに異なるシステムで管理されていた売上、仕入、在庫、利益、資金繰りなどの情報がERPに一元化されます。
- これにより、経営者は常に最新の正確なデータに基づいた意思決定を行うことができます。例えば、「どの商品がよく売れているのか」「どの部門の利益率が高いのか」「在庫は適正か」といった情報を、ダッシュボードなどで視覚的に、かつタイムリーに把握できるようになります。
- 勘や経験だけに頼らない、データに基づいた客観的な経営判断が可能になり、変化の激しい市場環境への対応力が高まります。
- 5. 属人化の解消とノウハウの共有
- 特定の担当者に依存していた業務がシステム化・標準化されることで、担当者の退職や異動による業務停滞リスクを軽減できます。
- 業務プロセスやノウハウがシステムに組み込まれる形となり、組織全体での共有が進みます。これにより、人材育成の効率化にもつながります。
- 4. 顧客満足度の向上
- 在庫情報がスピーディに更新されるため、顧客からの問い合わせに対してより正確な納期回答が可能になります。
- 過去の取引履歴や問い合わせ履歴なども一元管理されるため、より迅速で的確な顧客対応が実現します。
- 結果として、顧客満足度の向上につながり、リピートオーダーや良好な関係構築に貢献します。
- 2. 業務効率化と生産性向上
- 各部署のデータがリアルタイムで連携されるため、二重入力や転記作業といった無駄な手間が大幅に削減されます。例えば、営業部門が受注データを入力すれば、その情報が自動的に経理部門の売上計上や、倉庫部門の出荷指示に連携されるようになります。
- 見積書作成、請求書発行、支払い処理などの定型業務を自動化することも可能です。
これにより、従業員は単純作業から解放され、より付加価値の高いコア業務に集中できるようになり、組織全体の生産性向上につながります。
- 3. 内部統制の強化とセキュリティ向上
- ERP導入にあたっては、既存の業務プロセスを見直し、標準化することが一般的です。これにより、業務の進め方が統一され、特定の担当者しか分からないといった属人化を防ぎ、不正やミスの発生リスクを低減できます。
- 誰がいつ、どのデータにアクセスし、どのような操作を行ったかのログ(履歴)が記録されるため、トレーサビリティ(追跡可能性)が確保されます。
- アクセス権限を役職や担当業務に応じて細かく設定できるため、情報漏洩リスクを低減し、セキュリティレベルを向上させることができます。これは、取引先からの信頼を得る上でも重要です。
■ 中小企業がERPを導入するデメリットと注意点
多くのメリットがある一方で、ERP導入にはデメリットや注意すべき点も存在します。これらを理解せずに進めると、導入に失敗する可能性もあるので、しっかりチェックしていきましょう!
- 1. 導入コスト(初期費用・ランニングコスト)
- ERP導入には、ソフトウェアのライセンス費用だけでなく、導入を支援するコンサルティング費用、必要に応じたカスタマイズ費用、サーバーなどのインフラ費用(クラウド型の場合は月額・年額利用料)、そして導入後の保守サポート費用など、様々なコストが発生します。
- 特に中小企業にとっては、このコスト負担が導入の大きな障壁となる場合があります。導入によって得られるメリット(コスト削減効果や売上向上効果など)と、かかる費用を比較し、費用対効果を慎重に見極める必要があります。
費用の詳細については、関連記事「ERP導入の「価格」を徹底解剖!見積もりの見方と適正価格の考え方」もご参照ください。
2. 導入期間の長さと社内リソースへの負担
ERP導入は、単にソフトウェアをインストールすれば完了するものではありません。
現状業務の分析、導入するERPの選定、要件定義、カスタマイズ(必要な場合)、データ移行、システムテスト、そして従業員への教育など、多くのステップを踏む必要があり、一般的に数ヶ月から1年以上の期間がかかります。
導入プロジェクトを推進するためには、社内に専任または兼任の担当者(プロジェクトチーム)を置く必要があり、そのメンバーは通常業務に加えてプロジェクト業務も担うことになります。
これは、限られた人員で運営している中小企業にとっては大きな負担となる可能性があります。
- 3. 業務プロセスの変更と従業員への浸透
- ERPは、一般的なな業務プロセスに基づいて設計されていることが多いため、導入にあたって既存の業務プロセスを変更する必要が出てくる場合があります。
- 長年慣れ親しんだやり方を変えることに対して、従業員から抵抗感が示されたり、新しいシステムや業務フローに慣れるまで一時的に混乱が生じたりする可能性があります。
- 導入目的や変更の必要性を丁寧に説明し、十分なトレーニングを実施するなど、従業員の理解と協力を得ながら、根気強く浸透させていく努力が不可欠です。経営層が率先して利用する姿勢を示すことも重要です。
- 4. システム選定の難しさ
システム選定の難しさ
- 現在、市場には様々な種類のERPが存在します。
- 大企業向けの高機能なものから、中小企業向けに機能を絞ったもの、特定の業種に特化したもの、クラウド型、オンプレミス型など、多種多様です。
自社の業種、企業規模、業務内容、将来の事業展開などを考慮し、最適なERPを選定することが重要ですが、専門知識がないと判断が難しい場合があります。
機能が多すぎても使いこなせずコストが無駄になりますし、逆に機能が不足していると導入効果が得られません。
信頼できるベンダーやコンサルタントに相談することも有効な手段です。
5. カスタマイズの誘惑とそのリスク
「今の業務のやり方をそのままシステム化したい」という思いから、ERPに過度なカスタマイズ(独自の機能追加や変更)を加えてしまうことがあります。
しかし、カスタマイズをしすぎると、導入コストや期間が増大するだけでなく、将来的にERPのバージョンアップを行う際に、追加費用が発生したり、対応が困難になったりするリスクがあります。
できる限りERPの標準機能を活用し、業務プロセスの方をシステムに合わせるという発想を持つことも重要です。
■ ERP導入を成功させるためのポイント
メリットを最大化し、デメリットを最小限に抑え、ERP導入を成功させるためには、以下の点が重要になります。
- ● 導入目的の明確化
- 「なぜERPを導入するのか」「導入によって何を解決したいのか」を具体的に定義する。
● 経営層の強いコミットメント
- 導入は経営改革の一環であると捉え、経営層がリーダーシップを発揮する。
● 社内体制の構築
- 各部署からメンバーを選出し、責任と権限を持ったプロジェクトチームを作る。
● 現状業務の分析と課題の洗い出し
- 導入前に自社の業務プロセスを可視化し、課題を明確にする。
● スモールスタートの検討
- 最初から全社・全部門に導入するのではなく、特定の部門や業務範囲から導入を始め、段階的に拡大していく方法も有効。
● 信頼できるベンダー・パートナーの選定
- 自社の状況を理解し、適切な提案とサポートをしてくれるパートナーを選ぶ。
● 導入後の効果測定と継続的な改善
- 導入して終わりではなく、効果を測定し、さらなる活用や改善を続ける。
■ まとめ
ERP導入は、中小企業が抱える様々な経営課題を解決し、「経営の見える化」「業務効率化」「内部統制強化」などを実現するための強力な武器となり得ます。その一方で、「コスト」「導入期間」「業務変革への対応」といったデメリットや乗り越えるべきハードルも存在します。
重要なのは、自社の現状と課題を正確に把握し、ERP導入のメリット・デメリットを十分に理解した上で、「本当に自社に必要なのか」「導入によって何を実現したいのか」を慎重に検討することです。
ERPは魔法の杖ではありません。あくまでも経営をより良くするための「ツール」です。
導入を成功させ、その効果を最大限に引き出すためには、経営層から従業員まで、会社全体で目的意識を共有し、主体的に活用していく姿勢が不可欠です。
maruttoでも、いつもこの点をお客様によくご説明させていただき、ERP導入自体について一緒にご相談させていただきます。
この記事が、皆様のERP導入検討の一助となれば幸いです。








