「最近、仕事で『ERP』って言葉をよく聞くけど、正直なんのことかサッパリ…」
「DX推進の文脈でERP導入の話が出たけど、何が変わるの?」
この記事は、ITに詳しくない方、ERPという言葉を初めて聞いた方に向けて、ERP導入支援を手がけるmaruttoが「ERPとは何か?」をできるだけ簡単に、基本的な部分から解説します。
ERPとは?一言で言うと
【目次】
■ ERPとは?一言で言うと
■ ERP登場の背景:従来のシステム管理で見られた課題
■ ERPの仕組み:バラバラな情報を「一つに」統合
■ ERPを活用することで期待される効果
■ ERP導入を検討する上での注意点
■ まとめ:ERPは情報を統合管理する「仕組み」
ERPとは、「Enterprise Resource Planning」の頭文字を取った言葉です。
日本語に直訳すると「企業資源計画」となります。
もっと簡単に言うと、ERPとは「会社が持っている様々な情報(ヒト・モノ・カネ・情報)を、一つのシステムでまとめて管理し、経営の状況を把握しやすくするための仕組み」のことです。
これは「基幹システム」や「統合基幹業務システム」と呼ばれることもあります。
ERPの基本的な役割は、これまで部署ごとにバラバラだったシステムと情報を「一つに統合」し、一元的に管理する点にあります。この仕組みにより、情報を一元管理することで、業務の効率化やデータに基づいた意思決定を支援することを目指します。
ERP登場の背景: 従来のシステム管理で見られた課題
ERPがどのようなものかイメージするために、まずはERPが登場する前の状況や、現在でも見られるシステム管理の課題について考えてみましょう。
多くの会社では、部署ごとに異なる目的のシステムを使っていることがあります。
例えば、営業部は顧客情報や商談進捗の管理システム、経理部は会計システム、人事部は人事給与システム、製造部/倉庫は在庫管理や生産計画システムなどです。
これらのシステムは、それぞれの部署の業務には役立ちますが、システム間でデータが連携されていないケースも少なくありません。
例えば、営業部が大きな注文を取ってきたとします。
- 1. 営業担当者は、自分の使っている営業支援システムに受注情報を入力します。
- 2. その情報を元に、経理担当者は、別の会計システムに売上情報を手作業で入力し直す必要があったりします。
- 3. 同時に、倉庫担当者は、在庫管理システムを見て、出荷できる在庫があるか確認し、なければ別途生産部門に連絡を取ったりします。
- 4. 生産部門は、その連絡を受けて、生産計画システムに情報を入力し直し、必要な部品があるか確認し、なければ購買部門に発注を依頼する…といった流れになることがあります。
このように、部署ごとにシステムが独立していると、以下のような課題が生じることがあります。
● 情報の二重入力の手間が発生しやすい。
例えば、営業担当者が営業支援システムに入力した受注情報を、経理担当者が別の会計システムに手作業で入力し直す必要が生じるなどです。
● 手入力によるミスや、情報の転記漏れが起こる可能性がある。
● 部署間で情報を伝え合うのに時間がかかり、情報のタイムラグが発生しやすい。
● 会社全体の最新状況をすぐに把握するのが難しくなる(例:正確な在庫数や最新の売上予測など)。
こうした状況は、経営判断の遅れや業務の非効率につながる可能性を指摘されることがあります。
ERPの仕組み: バラバラな情報を「一つに」統合管理
上記のような課題に対応するために考えられたのがERPという仕組みです。
ERPの基本的な考え方は、これまで部署ごとにバラバラだったシステムと情報を「一つに統合」し、一元的に管理する点にあります。
ERPシステムの中には、通常、以下のような機能(モジュール)が組み込まれています。
会計管理:財務会計、管理会計など
販売管理:受注、売上、請求など
購買管理:発注、仕入、支払など
在庫管理:入出庫、棚卸、在庫評価など
生産管理:生産計画、製造指示、原価計算など
- 人事管理:人事情報、給与計算、勤怠管理など
これらの機能が、一つの大きなデータベース(情報を保管する場所)を共有するように設計されています。
- ▼ERP導入後の情報連携の例
- ERPが導入されていれば、営業担当者がERPの販売管理機能に受注情報を入力するだけで、その情報はERPシステム内で自動的に関連する部署の機能に連携されます。
会計管理:売上情報が自動で連携され、請求処理などに活用されます。
在庫管理:受注分の在庫が自動で引き当てられ、システム上の在庫数がリアルタイムで更新されます。もし在庫がなければ、その情報もシステム内で共有されます。
生産管理:(在庫がない場合など)生産が必要な情報が自動で連携され、生産計画を立てるための情報として利用されます。
このように、ERPは情報を一元管理し、部門間の連携をシステム内で完結させることを目指します。これにより、
・情報の二重入力の手間を削減する
- ・データの入力ミスや転記漏れのリスクを低減する
- ・部署間の情報共有をスムーズにし、タイムラグを減らす
- ・経営層が、会社全体のヒト・モノ・カネの動きに関する情報を、システムを通じて把握しやすくする
といった多くのメリットが期待されます。
例えるなら、部署ごとにバラバラのノートに情報を書いていた状態から、全ての情報が一箇所に集約され、関連情報が連携された、会社全体の状況を把握するためのデータベースを持つようなイメージに近いかもしれません。
ERPを活用することで期待される効果
ERPという仕組みを活用することで、企業は以下のような効果を得られる可能性があります。
- 1 . 業務の標準化
データ入力の手間削減や、予め設定された業務プロセスに沿って作業を進めることによる効率化 が期待できます。
2 . 情報の一元管理と可視化
会社全体の様々な情報がシステムに集約されるため、状況把握がしやすくなり、経営判断に役立つ情報を得やすくなる可能性があります。
3 . データの整合性維持
一つのデータベースで情報を管理するため、データの重複や矛盾が生じにくくなり、情報の信頼性を高めることが期待されます。
4 . 内部統制の支援
業務プロセスをシステム上で標準化し、操作履歴を残すことで、不正防止やコンプライアンス遵守に貢献する場合があります。
5 . 意思決定のサポート
経営層が、より統合された情報に基づいて、状況判断を行う一助となる可能性があります。
ERP導入を検討する上での注意点
ERPは企業の課題解決に役立つ可能性がある一方、その導入は簡単なプロジェクトではありません。検討する際には、以下のような点も理解しておくことが重要です。
- ● コスト
- ERPシステムの導入には、ソフトウェアライセンスやクラウドサービスの利用料だけでなく、導入コンサルティング、カスタマイズ、社員教育など、多岐にわたる費用が発生する可能性があります。
- ● 時間と手間
- 導入プロジェクトは、現状業務の分析、要件定義、システム選定、設定、データ移行、テスト、社員トレーニングなど、多くのステップを踏む必要があり、長期にわたることが一般的です。
- ● 業務プロセスの見直し
- 多くの場合、既存の業務プロセスをERPシステムに合わせて見直したり、標準化したりする必要があります。これは大きな変化であり、関係者との十分な調整や合意形成が不可欠です。
- ● システム選定
- ERPには様々な種類(特定の業種向け、企業規模向け、クラウド型、オンプレミス型など)があります。自社の状況や目的に合わないシステムを選ぶと、期待した効果が得られない可能性もあります。
ERP導入は、あくまで経営課題を解決するための「手段の一つ」です。導入ありきで考えるのではなく、自社の課題は何か、その解決のためにERPが本当に最適なのかを慎重に見極めることが大切です。
まとめ:ERPは情報を統合管理する「仕組み」
- 1. 定義と目的
- ERPとは、会社の中にある様々な情報(ヒト・モノ・カネ・情報)を一つのシステムで統合的に管理し、部門間の連携を促進したり、経営状況を可視化したりするための「仕組み」です。
- 2. 機能
- 統合された一つの大きなデータベースを共有し、会計管理、販売管理、在庫管理、人事管理などの主要な業務機能を網羅しています。
- 3. 期待される効果
- 情報を一元管理することで、業務の効率化やデータの整合性維持、データに基づいた意思決定を支援することを目指します。
- 4. 留意点
- 導入には、コストや長期的な時間、既存業務プロセスの見直しなど、相応の準備や投資が必要となります。
この記事を通して、ERPがどのような仕組みであり、どのような目的で利用されるのか、基本的なイメージを掴んでいただけたなら幸いです。
ERPについてさらに詳しく知りたい場合や、自社での活用を考える際には、お気軽にご連絡下さい。
ERPは情報を統合管理する「仕組み」です。








