プロジェクトを成功させるためには、予算管理が非常に重要です。資金が不足していれば、計画通りにプロジェクトを完了させることは難しいでしょう。
しかし、予算は単にコストを制限するためだけのものではありません。プロジェクトの資金調達の原動力となったり、ステークホルダーとのコミュニケーション手段になったり、さらにはプロジェクトのパフォーマンスを測定し、コストを適切に管理するためにも役立ちます。
この記事では、ビジネス統合ソフトウェアであるOdooを使って、どのようにプロジェクトの予算を管理できるのか、その機能と使い方についてご紹介します。

Odooにおける「予算管理」機能は、プロジェクト管理の不可欠なステップとして位置づけられています。
この機能を使うことで、プロジェクトに必要な資金を計画し、プロジェクトの実行中に発生する費用や収入を追跡し、予算計画と実績を比較してパフォーマンスを測定することが可能になります。Odooの予算管理機能は、主に会計モジュールの一部として提供されています。
【目次】
- ■ Odooの「予算管理」機能とは
- ■ Odooの「予算管理」機能の使い方
- ■ Odooの「予算管理」機能の活用方法
- ■ まとめ
※以下、掲載画像は「Budget | Odoo Project & Timesheets」を参考にしていますので、画面は英語表記となっています。実際の画面は日本語に対応しています。
■ Odooの「予算管理」機能とは
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Odooの「予算管理」機能の使い方
- 1. 機能の有効化
- まず、Odooのシステム設定を行います。
- 会計モジュールの設定画面に進み、「予算 (Budgets)」機能と「解析アカウント (Analytic Accounts)」機能を有効にする必要があります。「解析アカウント」は、プロジェクトなどの特定の活動に関連する取引を分類・追跡するために使用される重要な機能です。
Odooでプロジェクトの予算を管理するための基本的な使い方をご紹介します。
<予算の有効確認>

<解析アカウント有効確認>

2. プロジェクトと解析アカウントの関連付け
- Odooでは、通常新しいプロジェクトを作成すると、それに関連する解析アカウントが自動的に生成されます。予算を特定のプロジェクトに紐付けるためには、そのプロジェクトに割り当てられた解析アカウントを指定します。
- プロジェクトアプリから該当のプロジェクトを選択し、紐付けます。
- 3. 予算の作成
会計モジュール内の「予算」メニューから、新しい予算を作成します。予算には分かりやすい名前(例:「プロジェクトX 2022年」)を付けます。予算全体に適用する期間を設定することもできますが、これは必須ではありません。

4. 予算明細行の設定
- 作成した予算の詳細を「予算明細行」として追加します。各明細行では、以下のいずれか、または両方を指定できます。
- ● 予算ポジション (Budgetary Position)
費用(経費)や収入といった、費用の種類を定義します。例えば、「プロジェクト経費」や「プロジェクト収入」といったポジションを設定できます。複数の種類の費用や収入を一つの明細行にまとめることも、それぞれ個別の予算ポジションとして設定することも可能です。
- ● 解析アカウント
予算を特定のプロジェクトに紐付ける場合に指定します。これにより、そのプロジェクトで発生した費用や収入がこの予算に集計されるようになります。 また、明細行ごとにも期間を設定することができます。これを利用すると、全体の予算期間内でも、四半期ごとや週ごとといったより短い期間での予算計画を立てることができ、レポート機能が強化されます。
- 5. 計画金額の設定
各予算明細行には「計画金額 (Planned Amount)」を設定します。これは、その明細行で予想される費用または収入の金額です。費用として計画する場合は、マイナス値で入力する必要があります。一方、収入として計画する場合はプラス値で入力します。

6. 予算への影響
- 設定した予算に対して実際にかかった費用や得られた収入を反映させるには、会計上の取引(ジャーナルエントリ)を入力します。
- 例えば、プロジェクトに関連する経費を支払った場合は、経費精算レポートを作成します。この際、必ず該当するプロジェクトの解析アカウントを指定します。入力されたジャーナルエントリが完全に転記(Post)されると、予算の実績金額に反映されるようになります。
- 請求書や領収書の入力も同様に予算に影響を与えます。
- 7. 予算状況の確認
設定した予算の進行状況は、会計モジュール内のレポート機能にある「予算分析レポート (Budgetary Analysis Report)」で確認できます。
このレポートでは、設定した「計画金額 (Planned Amount)」、実際にかかった費用や得られた収入を示す「実績金額 (Practical Amount)」、期間の経過に基づいて計算される「理論金額 (Theoretical Amount)」、そして「理論金額」に対する「実績金額」の達成率 (Achievement)を確認できます。
これにより、予算に対する実績がどうなっているのか、進捗状況は計画通りかなどを一目で把握できます。また、各プロジェクトの画面からも、関連する予算状況を直接参照することができます。

■ Odooの「予算管理」機能の活用方法
Odooの予算管理機能は、プロジェクトの単なるコスト追跡にとどまらず、様々な方法で活用できます。
- ● パフォーマンス測定とコスト管理
「計画金額」と「実績金額」を比較することで、プロジェクトの予算パフォーマンスを測定し、コストが計画通りに進んでいるかを確認できます。予算超過の兆候を早期に発見し、対策を講じることが可能になります。
- ● ステークホルダーとのコミュニケーション
予算分析レポートは、プロジェクトの財務状況をステークホルダー(出資者や顧客など)に分かりやすく報告するための有効なツールとなります。
- ● 詳細なレポート作成
予算明細ごとに期間を設定することで、四半期ごとや週ごとといった詳細な予算レポートを作成できます。これにより、よりきめ細やかな分析や、特定の期間における資金計画の精度を高めることができます。
Odooの予算管理機能は、プロジェクト管理において資金計画、コスト管理、パフォーマンス測定を効果的に行うための強力なツールです。
予算の設定から、プロジェクト活動に伴う費用の記録、そしてレポートによる状況分析までをOdoo内で一元的に行うことができます。
これにより、プロジェクトの財務状況を常に把握し、より計画的かつ健全なプロジェクト運営を実現することが可能になります。ぜひOdooの予算管理機能を活用して、プロジェクト成功の確率を高めてください。
■ まとめ